兄貴の翔(しょう)が俺の面倒を見ていた時、なかなか言うことをきかない俺にこう言った。
『陸なんか生まれてこなかったらよかったんだ。陸のせいで、おかあさんは……』
涙まじりに言われた言葉はすぐに謝ってくれたけど、幼いながらもよく覚えている。
何気ない言葉だってこともわかっているけど。
その頃ぐらいからかだっけ?
1人でいるのがすきになったのは──・・・
それなのにあの日、ノー天気なコイツは俺のところに急にやってきたと思ったら、いきなりキスしてきてバカみたいに笑ったんだ。
それに俺は顔をまっ赤にして怒った。
だけどコイツに最悪って言いながら、沈んでた心はすぐに驚きと怒りでどっかに吹っ飛んでいって
必殺ワザをくらった時、一瞬 頬に不思議な温かさを感じた。