あるモノが目に飛び込んできた。
それに俺は吸い寄せられるように立ち上がり、白いチェストの方に歩いて行き、木製の写真たてを手に取る。
やっぱり見間違えじゃなかった。
「あっ…」
この時、コーヒーとロールケーキをトレーの上にのせて持って来た母親と、それを見てビックリする俺の視線が重なった。
そして、すぐバカ女の母親がニコッと笑う。
「クスッ。やっぱり陸くんだったんだ。随分大きくなってるけど、ちゃんと面影が残ってる。それは愛理の宝物の写真よ」
それは俺がどこかに失くしているか、すでに捨ててしまったモノで…
あの日、アジサイを見に行った時の写真だった。


