なっ……何??
何これ、どういう状況!?


頭の中はすでにパニックで、何もまともに考えられない。


「また、カフェに来いよ……」

「うん……」


そう答えるので精一杯だった。


翔の体温が背中越しにダイレクトに感じる。
吐息がうなじにかかって、くすぐったい。


「絶対だからな……つか、命令」


そして、一瞬、柔らかくて温かい何かが首筋に触れたような気がした。


「絶対……行くから大丈夫」

「それなら離してやる」


そう言ってほどかれた腕に、少し寂しさを感じながら、車を降りた。そして、振り返る事なくアパートに入る。


車が走り出す気配はない。
たぶん、あたしが家に入るまで待ってくれているんだろう。


何で、どうしてこんなに胸が苦しいのだろう。
まるで、恋をしているみたいに…。


「ねぇ、違うよね?」


だとしたら、きっと辛い。
絶対に、あたしに向くはずの無いベクトルだから…。


胸を押さえて、あたしは切に祈った。
これがどうか、恋でありませんようにと……。