「でもまぁ……礼は言っとく」

「素直じゃないわね」


そっぽ向く翔に、あたしは苦笑いを浮かべる。


「アンタもだろ、泣きそうになってたくせに」

「なっ、なってないわよ!」


嘘、バレてた!!
なんで、遠く見てたじゃない。


あたしは動揺をごまかすように、グイッとシャンパンを煽る。



「おい、酔いつぶれんなよ?程々にしろよな。でなきゃ、またおぶる羽目になる」

「も、もうしないわよ!」


もう、あんな風に押し倒されるのはごめんだもの。
というか、この男にあたし、押し倒されたのよね…。


あたしは、シャンパンを口にする翔の姿を盗み見る。


やっぱり、ムカつくくらいのイケメン。
でも、本当は優しいというまさかの株上昇。


いかんいかん、この人を好きになる事はないわ。


だって、あたしは失恋したばっかだし、たぶん翔はその元カノの事が忘れられないでいる。


それに、切なくなる自分の気持ちに気づかないふりをして、あたしはシャンパンをまた口にするのだった。