「おい林檎、俺とデートしろよ」

「は……?」


翔の手が、あたしの頬に当てられる。


ありえない事に、翔は不敵な笑みを浮かべて、デートに誘ってきた。


この時のあたしの顔は、ありえないくらいに情けない顔をしていただろう。


「あなた、ちょっと大丈夫?デートなんて言うキャラじゃないでしょう?」


少なくとも、あたしの知っている泉澤 翔は、不機嫌、ぶっきらぼうな、ブリザード男のはず。


なのに、怖いくらいに甘い。


「俺の全てを知らねーだけだろ、俺は至っていつも通りだけどな」

「いやいやいや」


怖いですよ、本当に。
あたしは驚いて、翔から距離取ろうと身を引いた。


「俺が、何を考えてて、どう動いてるか…アンタには何年経っても、わかんねぇーよ」


遠ざかる距離を埋めるようにあたしの耳元に唇を寄せて、翔は意味深に呟いた。


へ?
な、何!?どういう意味なの!?


「とにかく、決定事項だから。連絡先、登録しといたから、電話出ろよ」

「い、いつのまに……」


あたしは、不敵に笑うこの男に、まだまだ知らない一面があるんだと、驚きを通り越して、恐怖を覚えた。


あ、あたし……これからどうなっちゃうの。
翔との出会いに、波乱の予感がしてしょうがなかった。