「だーかーらー!英太がぁ、あたしを振るのがイケナイのよー!!」
「うるせぇ、耳痛ぇ、静かにしろ」
あたしの目の前に座る翔は、両耳を塞いで、呆れた目であたしを見つめる。
カフェから5分くらいの距離にある、居酒屋『たんぽぽ』。
飲み始めてから15分、あたしは翔への怒りと、失恋で日本酒責めというやけ酒をした。
「耳塞がないで!ちゃんと聞きなさいよー!」
「オイ、落ち着け…」
完全に出来上がったあたしに、翔が困惑している。それがなんだか、面白かった。
机の上に身を乗り出して、翔の手を掴み、耳から手を離させる。そして、ズイッと顔を近づけた。
あぁ、翔が2重……3重に見える。
頭もボーッとするし、自分が何言ってるのかも分からなくなってきた。
「アンタ……無防備すぎ」
「守られなきゃいけないほど……弱くないもの」
そう言えば、英太にもよく言われた。
『林檎は、守りたくなるタイプの女じゃないよな』って。
どうせ、あたしは気が強いし、仕事でもそこそこ成功してるし、可愛いげなんてないだ。


