時刻は20時。
あたしは一度家に帰り、荷物を置いてからこのカフェまでやってきた。
もちろん、服装は今日の仕事着のまま。
だって、帰って着替えてきたりなんかしたら、デートみたいに浮かれてるって翔に思われるじゃない。
手には、あの日に貸してくれた紺の傘。
まさか、もう会えないと思ってたのに、こうしてコレを返せる日が来るなんて…。
「というか、どうしてブリザード男と2人で飲む事になったんだろう」
きっかけは鈴木さんだけど、翔なら断ると思った。
あたしの事なんて、これっぽっちも興味なさそうな感じだったのに。
「まさか、夢だったりして」
あれ、白夜夢だったんじゃ……。
それを疑うくらいに、この状況がありえない。
「アンタ、独り言好きなのか」
「わっ、ちょっと、いきなり現れないでよ」
音しなかったし、気配も無かったわよ!
翔の事を考えていたから、突然の本人の登場に、びっくりする。
カッチリとした、カフェ店員の制服とは違って、ラフな私服姿に目を奪われた。
紺の薄いモッズコートに、白のパネルボーダーニット、その中には青いボタンダウンシャツを重ね着している。
黒のデニムに、茶色のレザーシューズが、物凄く似合っている。


