「なんなのよ、もう……」
「いやー、賑やかでしたね!」
疲れきったあたしとは裏腹に、空気の読めない男、後藤さんの発言でさらに疲労する。
「後藤さんは……悩みごととかなさそうですよね」
「ええ!俺にだってありますよ~!そんな、能天気バカじゃありませんって!」
そこまでは言ってない!!
自分で自虐してどうするの、後藤さん。
「もう…色々あって、何の話してたんでしたっけ?」
あたしは机に肘をつき、顎に手をおいて、「ふー」っと息をつく。
「新作の話ですよ!」
「あー、そうでしたね……」
後藤さんの一言で、また頭が仕事モードに戻る。
あぁ、新作どうしよう。
甘々な恋愛はもうたくさん、でも……読者が求めてるのは、桐谷 林檎の書く甘い恋愛小説なのよね。
「後藤さん、今回は瞑想するかもしれないです」
「アイディアマンの先生が、珍しいですね!?」
頭を悩ませるあたしを、後藤さんは珍しそうに見つめた。
本当、まさか私生活がここまで仕事に響くとは。
早く、切り替えなきゃなぁ…。
いっそう、恋愛出来ない女をテーマにする?
キャリアウーマンも増えてきた世の中だし。
そんな事を考えながら、翔の淹れたコーヒーを口にする。
やっぱり美味しい。
これを飲んでいる時だけ、何だか気分が落ち着くのを感じた。


