「あ?仕事してたのか?」
「打ち合わせ中よ」
どこが仕事中なんだよ?と言わんばかりの怪訝そうな目に、あたしはイラッとしながら答える。
「先生、そちらの方は知り合いですか?」
今まで黙ってあたし達のやり取りを聞いていた後藤さんが不思議そうに尋ねてきた。
あぁ、また後藤さんを忘れてた。
「ただの知り合いよ」
「ただの常連だ」
同時に他人以上友達未満である事を主張する。
そして、お互い目が合うと、すぐにフィッと反らした。
「先生って、何の?」
「先生は、恋愛小説作家の桐谷 林檎先生ですよ!」
翔は不思議そうに首を傾げる。
それに、後藤さんは笑顔で身を乗り出す。
「代表作は『この愛が尽きるまで』『桜坂で君を待つ』です!それはもう、ベストセラーにっ!!」
「後藤さん、とりあえず落ち着いて下さい」
なぜか興奮しだす後藤さんを止めた。
若干、翔は後藤さんの勢いに引いている。
それもそうか、ヘタレのくせに、こういう時は水を得た魚のように元気になる。


