「いえ……たまたま、見かけて……」
「そう……でしたか」
そしてまた、mikiさんは困ったような、寂しげに笑う。それを、不思議な気持ちで見つめていた。
ープルルルルルッ
またスマホが鳴る。
その音で、後藤さんを待たせている事に気づいた。
「げっ……後藤さんの事忘れてたわ」
ディスプレイを見なくても分かる。
不安で仕方なくなったんだろう、腕時計を見れば、14時を過ぎていた。
「行ってください」
「あ…すみません、えと、あたしは桐谷 林檎です。また、縁があったら」
「林檎さん……はい、また会える日を楽しみにしています」
mikiさんはまたふわりと笑い、小さく手を振ってくれた。
そう言ってあたしは、慌ててカフェの中へと入ったのだった。


