失恋にはバリスタ王子の恋ラテをどうぞ。



「………………」


あたしの隣に、同じようにカフェを見つめる女性に気づいた。


ベージュアッシュのショートボブに、ふんわりとした白のワンピースに黄色のカーディガンを羽織った、可愛いらしい女性だ。


その横顔は、少し寂しげで、カフェを見ているというより、ガラスウインドウの向こうの誰かを見ているように思えた。


「……あの、入られます?」



つい、声をかけてしまった。
なんというか、ほっとけなかった……のほうが正しい。


「え……?」


すると、女性は驚いたようにあたしを見つめて、すぐにふわりと笑った。



「ありがとう、でも……いいんです」


何がいいのか、あたしには分からなかったけれど、その人は右手にキャンパスを抱えていた。


「絵、描かれているんですか?」


画家さん……とかかな??
それか、趣味??


「はい、mikiという名前で、画家をしています」


mikiって……確か、風景画とかばかり描いている若い画家だ。絵に疎いあたしでも知ってる。


「まさか、こんな所でmikiさんに会えるなんて、ここには良く来られるんですか?」


あたしの質問に、一瞬動揺したように視線を泳がすmikiさんに、あたしは首を傾げた。