「これが現実、小説みたいに、ハッピーエンドにはならないもんね」
あたしは自嘲的な笑みを浮かべて、俯いた。
全てが、小説のように愛する人と結ばれるかなんて、分からない。所詮、物語でしかないのよ。
前みたいに、夢も希望も持てないな……。
「林檎、今度飲みに行こう!」
「え……?」
突発的な話の飛びように、あたしは目を見開く。
「そんで、たくさん吐き出してよ!どんな時でも、あたしは林檎の味方だから!」
「紗枝………」
そういう事ね。
紗枝はいつも、あたしが苦しい時、悲しい時に、傍にいてくれる。
持つべきものは、親友だわ。
そんなこんなで、ついにカフェ『Bitter Lover』にたどり着いた。
「ごめん、これから打ち合わせなの」
「じゃあ、また連絡して!」
「えぇ、ありがとう紗枝」
ーピッ
通話を切って、あたしはスマホを鞄に入れる。そして、お洒落な木造のテラス付きカフェの扉の前に立つ。
ここ、雰囲気も良いのよね。
親友に話を聞いてもらった事と、お洒落なカフェでの打ち合わせに、少し心が踊った。
そんな時……。


