「……林檎か?」
「……え?」
不意に、後ろから名前を呼ばれ振り返ると、そこには、予想外の人がいた。
黒髪のオールバック、忘れたくても忘れられない元カレ。
「英太……」
なんで、こんな所にいるのよ。
しかも、前にあたしと待ち合わせしたこの場所に。
「林檎……」
お互い何を言っていいか、わからずに見つめ合う。
文句の1つでも言ってやりたいのに、そんな気が起こらない。
たぶん、英太の事をもうなんとも思っていないからだ。
怒りは、好きな相手だからこそ起こるものだと思う。
「林檎……えーと、俺とやりなおさないか」
先に、沈黙を破ったのは英太だった。
あたしは、呆れたように英太を見つめる。
「あなた、あたしに魅力を感じないんじゃなかったの?」
「いや……あの女と付き合ってて分かったんだ。男を金ずるとしか思ってない奴より、林檎みたいに自立して、落ち着いてる女のが良いってさ」
悪びれもなく、失礼な男。
用は、彼女にするならトキメキのある女で、結婚するなら、ある程度自立のある女……そんな、都合の良い…。


