「……先生、俺はいつでも相談乗りますから」

「え……?」


考え込んでいるあたしに、後藤さんは優しい言葉をかけてくれる。


本当、良きパートナーだと思う。


全く、もっとこんな風に男らしいところを見せれば、彼女の1人や2人出来そうなのに、もったいないわね。


「ありがとうございます、さて、少し気晴らしに外へ出てきます」


あたしは鞄を手に、立ち上がる。


「はい、気を付けて!夜は、何か差し入れしますよ!」

「ふふっ、ありがとうございます」


後藤さんの優しさにあたしは笑みを返して、本社を出る。そして、久しぶりに地元の駅まで戻る事にした。


駅に着くと、なんとなく……あのカフェまでの道のりが恋しくて、自然とその道を進む。


「そんな離れてたわけじゃないのに…久しぶりな感じがするわね」


あたしは苦笑いを浮かべながら、ついにカフェの前まで来てしまった。


そういえば美紀さんは、ここから翔の姿を探してたんだっけ。あたしも、ガラスウィンドウから中を見つめる。


ーカランカランッ


「林檎さんか!!」

「っ!!」


突然、カフェの扉が開き、名前を呼ばれる。
一瞬、翔だと思って、ドキッとした。


恐る恐る扉を見ると、そこには息を切らした鈴木君が、あたしを驚いた顔で見つめていた。


「鈴木さん、お久しぶりです」


ほとんど毎日のように通っていたから、来ないのも不自然だし、きっとあたし達が別れた事は知ってる。


どんな風に別れたのかも。