「ふざけんな……よ。全部…嘘かよ……」


「っ……翔、暇つぶしに付き合ってくれてありがとう。小説にも生かせそうだし、そこそこ楽しかったわ」


悪女のように、憎しみが生まれるように悪びれもせず笑う。
ただ、翔を傷つける事だけを考える。



「すげー演技力。騙されかけたわ」


酷く冷たい声、瞳があたしに向けられる。
怯みそうになったけど、あたしは笑い続けた。


「じゃあ、これから彼とデートなの…さよなら」

「アンタなんてっ…好きになんてなってねぇ…大嫌いだ」


踵を返すあたしの背に、悲しげにかけられた言葉。
背を向けたところで、限界だった。


「ふっ……っ……」


嗚咽がこらえられない。
ポロポロと涙が溢れて、前なんて見えなかった。



「あたしは……翔が好き……今でも……」


小声で、自分の気持ちを伝える。
1番聞いて欲しい人には、もう2度と届かない。


あたしはスマホを取りだし、美紀さんに電話をかける。