「…うーん…」


気が付くと、布団で横になっていた。


「えっ…?なんで?ここは…」


起きようとしたが、頭がくらくらする。


「まだ、寝ててください!」


引き戸を開けて、那住が部屋に入り掛けて慌て、持っていた盆を落としそうになる。


「横になっててください。近所の診療所で診てもらいましたから!」


「えっ?」


「熱があります。疲れが溜まってた上に、徹夜までして、

追い討ちを掛けて。風邪を引いてしまったようです」


そう言われてみれば、いろいろ必死で忘れていたが、


風呂上がりで飛んで来たので、湯冷めもしたのだろう。


座って、枕元に置いたお盆に、小さな鍋と湯呑み、急須が見えた。

蓋を開けると、湯気がたち、梅干しと卵のお粥の香りがした。


「すみません、無理させてしもうて」


布団の脇で正座をし、うな垂れる那住。


「そんなこと」


声がかすれる。はっ、となり、


「病院まで、運んでくださったんですか?重かったでしょう??私」


恥ずかしさに赤くなる。


「とんでもない!車までですし。ていうか、その前もおぶったとですし」


そういえばそうだった。


那住も赤くなり、慌てて手を横に振る。


何かあったときのために、一応中古の軽自動車を持っていた。滅多に使うことはなかったが。


改めて、沈黙に緊張し、話題を探そうとする直見。


「他の子たちは、学校でしたっけ」


「原稿も、一区切りつきましたし、今日は休ませました。直見さんも少し休んでください」


お粥をよそって渡される。


「ありがとうございます」


「…早く、よくなってもらわないと、僕が困ります」


「いつまでもここで寝てられませんしね」


ふと、なぜ直見の部屋に運ばなかったのかと、疑問に思った。


確かに帰ったところで、誰もいないので看病は必要だが。


「そういうことじゃなかとです!」