すべてが思い出になる前に





鴨川が涼太の机の前で立っていた。



「ずっと電話が鳴ってるぞ」



慌てて自分の席に戻った涼太は、携帯を手に取り画面を見ると、茜から着信が数件来ていた。



「やべー、ちょっと出てくる」



そう鴨川に言い残して、パンと缶コーヒーを持って医局を出た。



「誰だろ、田上茜って。どっかで聞いたことあるな…」



鴨川は弁当を食べながら、何気なく開けた引き出しから財布を見つけ、1000円札を取り出し涼太の机の上に置いた。



涼太は医局を出てすぐの廊下の白い壁に背を付け、茜に電話を折り返した。


着信履歴が3件、鬼電だ。



「あっもしもし涼太?久しぶり、今電話しても大丈夫?」


「いいよ」