一方、地下から戻った工藤は嫌な不安感で胸の内をもやもやとさせていた




先程の爆弾


他人から見ればそりゃあ複雑でとんでもない代物に見えただろうが、工藤は疑問を抱いた


あまりにもあっけなかったからだ


トラップも構造も、今まで自分が関わった事件でのものと同じ


新たな仕掛けもひっかけも何もなかった。


ただやたら配線を多く複雑に作っただけ


工藤とってはあまりに単純で、だからこそ引っかかった。




まるで、工藤をおびきよせ、時間稼ぎをしたみたいだと




わざと脅迫文に自分の名前を出したのは


そうすれば工藤がやってくると分かったから


爆弾をあれにしたのは


工藤だけにしか解けないだろうと知っていたから


そうすれば解除するのはおのずと工藤になり、わざと配線を多く複雑にしたのは時間がかせぐ為


新たな仕掛けを付けなかったのはそれだけの労力を使うほどではなかったという事


つまり、本命はこちらではないという事。




もし工藤が抱いているこの不安が事実だとしたら、いやな仮説が浮かび上がる。




「おい工藤、どうしたんだ!」



後から追いかけてきた雪村が尋ねる。


工藤が足を止めることはない。



「…さっきの爆弾、罠かもしれない……」


「え、…どういうことだそれは」


「もしかしたら、黒瀬たちが危ないかもしれない…!!俺はマンションに戻ります、いいですか?」


「ああ」


「じゃあ、すいません。後で連絡は入れます。すぐに動ける体制にしておいてもらっていいですか?」


「分かった」



工藤はそれだけ言うと、急いで駐車場に向かい車に乗り込んだ。


携帯を確認するが連絡は入っていない。


それをいい知らせだと信じ、車を走らせる。


速度など気にしてられるかと猛スピードでマンションに向かったのだった。