日が昇る。


狙撃されて四日目の朝がきた。



黒瀬は顔に当たるフニフニとした感覚で目を覚ます。


それの正体はオリオンの肉球。


足踏みするように顔に前足を押し付けてくる。



「~~オリオン、何…朝なの?」


「んなぁ…」



くあっと欠伸をしながら同じ同じ動作を繰り返すオリオンを可愛いなあと思いながら、むくりと上半身を起こした。


寝ぼけ眼をこすり、乱れた髪を整えながら辺りを見回すが、工藤の姿は見当たらない。


オリオンと一緒に部屋の外に出た黒瀬は、ソファに座る女性の後ろ姿に目を丸くした。



「は、ハナさん…!?」



誠一郎の婚約者・ハナだ。


黒瀬の声に驚いたようにバッと振り向くと慌てたように駆け寄ってきた。



「凪ちゃん!良かったわ!ホントに無事だったのね!!」


「なっ、どうしたのハナさん?」


「お、黒瀬起きたんだな」



キッチンの奥からマグカップを二つ持った工藤が顔を出す。



「どういうこと工藤さん」


「まあまあ座れ、黒瀬の分も持ってくるから」



そう言って工藤は二人をソファに促し、座らせた。


何も分かってない黒瀬は寝間着のスウェットのままハナの隣で変な顔をする。


ハナの方はと言うと、終始心配そうな顔で彼女の手を握って離さない。


そんな彼女達の前の机の上にぴょんっと飛び乗って来たオリオン。



「わっあら何この子」


「…ああ、オリオン。工藤さんの飼い猫」


「カワイイわねー」


「……」



オリオンは机の上に立ち、じーっとハナの顔を観察している。


ハナが手を伸ばすと恐る恐るその手に顔を近づけて匂いを嗅いだ。


そして、「…くしゅっ」と小さなくしゃみを。



「あらあら!ホントに可愛いわねー。今朝手入れしてきた花の花粉が付いてたかしら」


「にゃーー…くしゅっ…くしゅっ」


「そうかも…おいでオリオン」


「んにゃ。…くしっ」



オリオンはそれからしばらく、くしゃみが止まらなかった。