「お〜力持ちだねえ、凜は」
昼休み、担任に頼まれた大量の教材を両手いっぱいに抱えて歩くあたしに、掛けられた声。
振り向かなくても誰だか解る。
「どこがよ、か弱い乙女なのに」
「うわー、お前のどこが乙女なんだか」
「なにそれ。失礼な」
その言葉に、ハハッと綺麗な茶色い髪を揺らし目を細めて笑うそいつは、いとも簡単にあたしの鼓動を速めて。
キューッと胸が掴まれたように苦しくなる。
「ま、頑張って運べな」
ポンッとあたしの背中を叩いて去って行こうとするそいつに、「は?手伝ってくんないの!?」と返した。
「大丈夫だって。お前乙女じゃないからそんくらい余裕だろ」