ファンタジー・ボーイ




その後も大北は本を貸すという俺の申し出を頑なに断り続けた。

まぁ、人には好き嫌いあるし、仕方ないか。



「な、大北」



「ん?」



「……映画、楽しかった?」



彼女は全然本を読まないのに、今日誘ってくれたのは俺の為なのかな。






「もちろん。楽しかった!

私が観たくて誘ったんだから、気遣わせてごめん」



「いや全然!

そっか。楽しかったなら良かった」



「うん。今日はありがとございました」



そう言うと大北は軽く頭を下げた。

気づいたら、待ち合わせていた駅に着いていた。

事前に約束していた通り、俺は明日朝から練習なので、今日のプランは映画でおしまい。

改札を通ったら、大北と別れる。



「今度本返しに行くから」



「うん、待ってるよ」



お互いに軽く手を振ると、俺たちはそれぞれのホームへと降りていった。