「いやー、めっちゃ良かったな!
実写ってあんま良いイメージ無かったけど、今日観てみて実写なりのよさが分かった気がする」
俺は思っていた以上の映画のクオリティに、観終えた後も興奮していた。
大北はそんな俺を見守るかのように、にこにこと笑いながら、そうだね、と返してくれた。
「昨日1巻だけ読んだけど、やっぱ帰ったらアイスヒルの続き読もうかな。
大北は結局昨日読み終えたの?」
時々相づちを打ってくれていた彼女は驚いたように俺を見ると、視線を彷徨わせながら、
「あー、実は読んでない。
ていうか、ほんと読むの苦手だって言ったじゃん。
あれ貸し出し予約入ってた奴だからさ。
途中で渡さなきゃと思うと読み進めにくくて」
せっかく図書館にいるんだから読めばいいのにと思ってた。
何だ、これから借りる人に気を使ってたのか。
「そんなことなら、俺が貸すよ。
延長手続きしなくても大丈夫だよ」
冗談を交えてそう言ったのに、
「いや平石に悪いし。
あんまり読まないから途中で挫折しちゃう」
でもありがとね、大北は少し笑うと、そう言ってくれた。

