大北と一緒に帰った次の日、俺は駅の改札で彼女を待っていた。

今日は貴重なオフの日なので、心置きなく映画を楽しめる。



「ちょっと早く着きすぎたかな」



スマホを取り出し、連絡が無いか確認する。

日陰を見つけてみたものの、そこもしっかり暑くて、俺は目に入りそうな汗を指で拭った。







昨日までは何とも思わなかったけど、今更になって映画を観るのが待ちきれなくなっていた。

思わず原作を読み返してしまった程に。

大北も昨日同じ本を持ってたけど、もう読んでんのかな。



「平石、おはよ。ごめん、待った?」



顔を上げると、白シャツにデニムという、非常にさっぱりした格好の女子が前に立っていた。

袖や裾から伸びる腕や足首が、いつもより大北を華奢に見せている。

普段見ることの無い服装に、俺は少し緊張していた。



「いや、俺が早く着いちゃっだけだし。

大北こそ、しっかり5分前じゃん」



「まあね。

どうする?もう映画館行っちゃう?」



大北は時計を確認しながら聞いてきた。

確かに、始まる時間まで少し余裕がある。