どうしよう、待たせてるかな。
何だかんだで、片付けに時間がかかってしまった。
慌てて下駄箱へ向かうと、平石は既に着替えてスポーツバックを背負って待っていた。
「じゃーな、平石」
「おう、七瀬お疲れ」
同じサッカー部だろうか、平石が挨拶を交わしていた。
そして、靴も履き替えずに突っ立ったままの私に気づくと、
「ほら、履き替えたら行くぞ」
と私に近づいてきた。
「一緒に帰らなくて良かったの?」
靴を履き替えながら、聞いてみる。
「いや、今日はお前と約束してたし」
履いている手を止めて、隣を見上げた。
平石の顔を見ようと思ったけど、いきなり歩き始めてしまったから分からなかった。
急いでかかとを靴に押し込んで、彼の背中を追いかける。
平石は追いついた私を横目で見ると、少しだけ歩く速さを緩めてくれた。
そのまま駅まで別れずに並んで歩く。
会話の多い帰り道では無かったけど、むしろそれが心地よかった。

