「やー、ほんとに好きなんだなって。

余りの勢いに、こう、つい」



ね?、とか柄にもなく笑顔を作って首を傾げてみる。

ちょっとぶりっこっぽい感じで、ウケを狙った、けど。



「あー、そうかい」



渾身の冗談を気にすること無く、平石は私の方へ手を伸ばすと、わしゃわしゃと髪を撫でてきた。






貸し出しの準備が出来た。

本を袋に入れて渡そうとして、私はふと思いついた。

壁にある図書館のお知らせを眺めていた平石に声を掛ける。



「平石、」



彼は、ん?と私の続きを聞くためにきちんとこちらを向いてくれた。



「一緒に観に行く?映画」



「……え、いいの?」



「いいのって、うん。

私も観たかったし」



「っしゃあ!」



急にガッツポーズを作ると、平石は時計に気がついた。

そして、慌てて私から袋を受け取る。



「やべ、休憩終わっちゃう。

大北、絶対だぞ。

明日また来るから」



さんきゅ!と言い捨てて、彼はバタバタと図書館を出て行った。

その素早さに呆気に取られた私は、



「……騒々しいな」



と1人になったカウンターで呟いた。