どんっ。



「おおきたー。これ頼む」



「ん」



椅子に座ったまま、本を受け取った。

今日は文庫本だった。



「お、普通の小説じゃん」



「あのな、俺だって何でも読むよ。

今日はこういう気分なの」



なるほど、そうなのね。

妙に納得しながら、ふと今朝のテレビを思い出した。



「あ、そーいえばさ、シンボル・オブ・アイスヒルの映画が公開されるね」



「そう!そうだよ!!

大北よく知ってたな」



平石はいきなりカウンターに手を突くと、すごく嬉しそうに身を乗り出してきた。



「……テレビで見た、から」



余りの食いつきっぷりに、椅子が少し後ろへ下がる。

平石はそれを見逃さなかった。



「おい、引くなよ」