すっかり夏らしくなって、肌にまとわりつく空気も暑い。
図書館ではゴーゴーと音を立てて、古いクーラーが気持ちばかりの冷風を送っていた。
世間は、夏休みだ。
私はカウンターの椅子に座って、のんびりと数学の宿題を解いていた。
夏休みの間も、図書館が開館する日がある。
さすがに委員会もこの期間の業務は無い。
それでも私はプロフェッショナル・オブ・図書委員の権利を駆使して、司書さんの代わりに業務をしている。
私にとってここはパラダイスだからだ。
図書館は居心地が良いし、何より自室より集中して宿題が出来る。
開館日のお知らせなんて誰も読んでいないので、ここへ来る人もいない。
ここが開いているのを知っているのは私だけなのだ。
この広い図書館を独り占めするという優越感を、
「あれ、大北。いたいた」
……訂正しよう。
ここが開いているのを知っているのは、彼と私だけだ。