「……4、5。5冊借りるのね。
ギリギリいっぺんに貸し出せる数だけど、こんなの読み切れるの?
返却は来週だよ」
「来週は昼休みに部活のミーティング入っちゃってさ。
2週間分借りようと思って」
だから、と平石が続ける。
「延長手続きお願いしておいてもいいですか!」
手を合わせて拝んできた。
うーん。
本来延長手続きは返却日にお願いしに来るものなのだ。
出来なくは無いけど、めんどくさい。
私が渋っていると、平石はちょっと屈(かが)んで、同じ目線になった。
女子にされてもどきっとしてしまうようなことを、
彼は意図せずにしてくる。
更に上目遣いで、だめ?とか聞いてきた。
「……だめではないよ」
「よっしゃ!大北ありがと!
いやー、優しいね」
図書館での彼は、去年から私の知っている平石のどれでもなくて戸惑う。
距離が近くて、屈託なくて、ちょっとだけどきどきするのだ。
だからって上目遣いするなよ、上目遣いを!

