▷▷▷


───眠れないの?仕方ないなぁ。

じゃあ、ちょっとだけ、お話しをするね。

……こことは別の世界の話。



ある世界に文字のない、ウヘルという国がありました。

本も新聞もウヘルにはありません。



人々は自分の両親や師匠から、家業や技を学んでは次世代へと伝えていました。

買い物も屋台や、市場で言葉で値段や品物を言って、取引してたんだよ。



さえずり屋という、国中を歩いてニュースを伝える職業もありました。

彼らはお金もらって、市場や酒場でその村の人達に最新のニュースを話して聞かせていました。



離れていては音信が途絶えるから、家族は基本的に同じ土地や近い村で暮らしていたんだ。

ウヘルでは文字が無いなりに、みんな工夫をして、言葉や身近な人達の関わりを大切にしていた。