ファンタジー・ボーイ




俺は借りた本を持って、その日は真っ直ぐ帰宅した。

部活がオフなのを良いことに勉強も忘れて読みふける。

溢れるような言葉の渦から湧き出てくる世界を、冒険を、登場人物の感情を、体感する。

ページをめくるのももどかしい程に読んで、読んで、読みまくった。



「ふぅーっ。終わった……」



1つの物語を読み終えた感動のせいで、ビリビリと皮膚が震えてる気がする。

多分、鳥肌だ。

そしてじわじわと指先まで、心地良い疲労感に包まれていた。






読み続けていた物語が、幕を閉じた。

続きを読みたい寂しさはあっても、そこに虚しさは無い。



「やっぱ、読んで良かった」



読み終わった後の何とも言えない気持ちも含めて、俺は読書が好きだ。






時計を見ると、既に真夜中だった。