「え、平石どーし、」
「頼む、誰にも言わないでくれ!……俺が児童書読んでるの」
カウンターの向こうへ落っこちるんじゃないかってくらい、身を乗り出して大北に手を合わせる。
このままほのぼのとした空気で帰れば、俺がひた隠しにしてきた趣味が暴かれてしまう。
何気ない会話の中で、大北は友達にポロッとこぼすかもしれない。
「あ、この前平石がさ、図書館来て。
児童書借りてったんだよね」
「えー、意外!」
「でしょー?」
ああああ、やめてくれえええ。
……簡単に想像出来てしまう。
そんなことされたら、俺の周りの男子にだってすぐ知れ渡るだろう。
笑われるのも時間の問題だ。

