「……『シンボル・オブ・アイスヒル 最後の戦い』」
「平石ってそういうの読むんだ」
え、ちょっと待った。
「本読まないんじゃねーのかよ!?
何でお前が知ってんだよ……」
がっくりと膝をつきたい気分だ。
心なしか視界が真っ暗になった気がする。
「へぇー、サッカー部のエースで、
硬派で社交的なイケメン枠として大いに注目されている“あの”平石が、
こってこての児童書を読むんだ、意外。
しかも今じゃ廃れてるけど、昔はイギリスでヒットしたシリーズだもんね」
目の付け所はいいなぁ、と大北は更に付け加える。
「何で、読まないのに知ってるんだよ。
知らないと思ったから言ったのに……」
本を読まない大北ならタイトルを教えても、
中身が何か知られないまま、やり過ごせると思ったからだ。
「甘いね、平石。職業柄知ってるのよ」
何が“職業柄”だよ。ただの委員会じゃん。

