正確には、ぼくは障害は記憶だけではないけれど。


ぼくは、ヒトに興味が持てないのだ。


ヒトの名前なんて覚えられないどころか。

男も女も区別がつかない。

ヒトの声を理解することができない。

ヒトの気持ちも理解できない。


例えるならそう、ぼくはヒトが蝶々に見えるのだ。

ヒトは蝶々の個人の名前なんか知らない。

パッと見ただけでは、オスメスなんて分からない。

蝶々の声も聞けないし。

蝶々の気持ちなんて分からない。

別に、蝶々でなくても良かったのだけど滅多に見かけない蝶々がぼくは好きなのだ。


ところで、お医者様は…だったと思うけど、原因は、ぼくがずっといじめられていたからだと言う。

他人に興味を持つことで傷ついてきたから、関心が消えた。


でもぼくは入院や治療はしなかった。

というのも、そんな障害治るかわからないし。

実は、ぼくの障害は不便性で言えばそれほど酷くないのだ。

スピーカーを通して一人の声を聞くなら、ちゃんと理解できる。

文字もかけるし話せるし、肉体的にはどこも悪くないのだから。


でも、ぼくはヒトに馴染めなかった。

狐が犬の群れに混じることができないように。

ぼくはヒトに馴染めなかったのだ。


当然と言えば当然かもしれない。

だって、なんの興味もないイキモノと一緒にいることなんて、とても難しいのだから。