寝てるんだろうな、と思いながらとりあえず扉をノックして静かに開けた。


心優ちゃんは眠ってはいないが、ぼーっと一点を見つめている。



葵 「心優ちゃん、遅くなっちゃってごめんね。

ご飯、食べられない?」


心優は無反応のまま。


葵 「心優ちゃん、さっきできなかったから、聴診だけさせて欲しいな。」


そう言いながら、ポケットから取り出した聴診器を手で温め、心優の服に手をかける。


が、心優は嫌がり抵抗する。

声は出さない。

ただ、服を捲ろうとした手と聴診器を持っても握り、聴診させてくれない。


が、喘息を持つ心優に聴診をしないなんてことはできない。ましてや、あれほど大きな発作が出た後だ。しかも2日連続で。

いつ急変するか分からない心優。


聴診だけは何とかさせてもらいたい。


葵 「ごめんね。」

心を鬼にし、片手で心優の両手をつかみ、少しできた服の隙間から手を入れ音を聞く。


心優 「っ…」


涙を流し始める心優に心がいたむ。


雑音が激しく、心拍数も早い。


葵 「よし、頑張ったね。心優ちゃん。」


優しく声をかけ頭を撫でる。


葵 「心優ちゃん、点滴追加するね。」


そういいあらかじめ持ってきていた鎮痛剤、発作止め、栄養剤の点滴パックを変える。