病室にひとりになって数十分。


コンコンッガラッ

「心優ちゃん、お昼ご飯の時間だよー!ゆっくり食べてね。また後で下げに来るからね。」


そう言って机にご飯を置いて出て行った看護師。


心優は食欲がなかったため食べずに、窓の外を眺めていた。

しばらくして、心優はトイレに行きたくて部屋に備え付けのトイレに向かおうと床に足を下ろし、立とうとした。


が全身に強い痛みを感じ、足に力を入れることができず、そのまま崩れ落ちた。


心優 「った…グスッ。ん、ト、イレ。はぁはぁ」



それから数十分は我慢できた心優だったが、我慢の限界で心優の意思とは反対に、漏らしてしまった。



心優 「グスッヒック、な、んで…グス、ヒック、ヒック」



足に力が入らない心優はその場でただ涙を流す。


コンコンッガラガラッ


葵 「心優ちゃん、お昼食べれたかなー?」

と言いながら病室に入った葵は目を見開いた。


ベッドから崩れるようにして座り泣いている心優。


すぐに心優の元に駆け寄ろうとしたが、

心優「やぁっ!来ないでっ!やだっ!お願いっ!ヒックヒック」


泣きながらそういう心優にゆっくりと少し近づきようやく何が起きているのか理解した。




葵が来るのを待っていたはずの心優。
葵が来て安心したはずの心優。


だが、どうしても恥ずかしいという気持ちの方が勝ってしまう。

どうしても見られたくないという気持ちが勝ってしまう。


葵 「心優ちゃん、泣かないで?泣かなくても大丈夫だよ。すぐ戻ってくるからちょっとだけ待っててね。」


そう言い残し、病室を出て行った。



葵が出ていったことで心優に再び不安が襲う。

あれほど近づかないで欲しいと思っていたはずなのに、不安で不安で涙が次から次へと溢れる心優。



ずっと床にいたもんだから心優の体は冷え切り、ブルブルと小刻みに震える。



葵 「もう泣かないの。大丈夫だから。」


聞きたかった優しい声。



そう、葵の声。


葵の声が耳元で聞こえたと同時に体がふわっと浮いた。


葵が心優を姫抱きにし、ベッドに下ろした。


震える心優の肩にブランケットをかける。