葵が微笑むと心優も少し安心した表情を見せた。


力が入らないなりに手を動かそうとした心優を見て、里田が心優の手を取る。


手が触れた瞬間、少しビクっとなっていたけれど、落ち着いているので大丈夫そう。


里 「このまま力入れられるかな?」


そう言われ、力を入れようとするがなかなか入らない。


心優はどんどん悲しそうな顔になる。


里 「うん、頑張ったね。

そんな悲しそうな顔しなくても大丈夫だよ。

時間はかかるかもしれないけど、

ちゃーんと力入るようになるから。ね?」


心優の表情を見ながら話しかける。


葵と亮はただ近くで見守るだけ。


里 「まずは、マッサージしていくよ。

筋肉や神経を刺激することによって血行もよくなるんだよ。

始めていくね。

足からやっていくよ。

触るよ?」


心優がこれ以上怯えないように、


ひとつひとつ丁寧に説明しながら


声かけをしてくれる里田に葵も亮も安心。


触れる時にビクっとなる心優だけど、


取り乱すことがないから大丈夫そう。


里 「痛くない?大丈夫?」


小さくコクンと頷く心優に微笑む里田。


マッサージが終わると、


里 「よし、そしたら少し足曲げていくね。」


そう言いながら、ゆっくりと膝を曲げていく。


心優 「んあっ、やぁ」


ある角度まで行くと痛がる様子を見せた。


里 「ここまでだね。

この辺だと大丈夫かな。

ちょっと角度を記録しておきたいから

計らせてね。」


少し角度を緩めたあと、

そう言ってポケットから器具を取り出した。


心優 「やあー!痛い、やあ!」


里 「大丈夫だよ!

これ、痛くしないから大丈夫だよ。」


嫌々と首を横に降りながら、涙を流し始めた心優をみて、葵は、


葵 「大丈夫だよ、心優。

怖くない、怖くない。」


そう言いながら手を握ってあげる。


その間にささっと里田は記録した。


里 「痛くなかったでしょ?

でも怖がらせちゃったね。

反対の足もやっていきたいんだけど、

大丈夫そうかな?」


心優は涙を流し続けているため、


葵 「少し、休憩にしてもいいですか?」


と聞く。


里 「あ、そうですね。休憩はさみましょう。」


そう言ってくれた。


葵 「心優、ちょっと水分取ろうか。」


そう言ってスポーツドリンクにストローをさして口元に持っていく。


少し口に含んでゆっくりと飲み込む。


心優 「ぎゅっ、ダメ?」


葵「いーよ、抱っこ?」


コクンと頷いてにこっと微笑む。


心優を抱き上げぎゅっとしてあげる。


葵 「ん?心優、熱上がった?」


亮 「今朝は37.6℃だったみたいだけど、計ってみる?」


葵 「うん、測ってみるかな。

ちょっとごめんよ。」


そう言って心優の襟元から体温計を入れる。


心優 「んん、やっ」


葵 「うん、ちょっと我慢。すぐなるよ。」


心優 「うぅぅ、グスッ」


葵 「何で泣くの〜」


ピピピッピピピッ


葵 「うわ、すごい上がったね。

しんどいでしょ。」


亮 「うわ、ほんとだ。よく我慢してたね。」


39.6℃という表示を見て驚く。


通りでぐずり始めたわけだ。