どんどん涙が溜まっていく心優の瞳。


葵も胸が痛い。


葵 「心優、あーん。」


ゆっくりとだけど、小さく口を開けた心優。


舌圧子で口を大きく開けさせながら


丁寧に薬を塗っていく。


体にあまり力が入らない心優は抵抗もできないまま、涙を流して耐えた。


葵 「よし、おしまい!

頑張ったね」


頭をくしゃくしゃ撫でながら褒める。


葵 「今日からね、リハビリを始めようと思うんだ。もう少ししたら、理学療法士の人がくると思うから待ってようね。」


心優 「やっ」


葵 「大丈夫、優しい人にお願いしてるし、俺も一緒にいるし、怖がらないくても大丈夫だよ!」


怖いからか、若干震えている心優。


コンコンガラガラ


扉のノックの音にビクッとなる心優。


亮 「おはよう、心優ちゃん」


亮が病室に入ってきた。


オペをしたのは亮だから、


最初は亮もリハビリを見るらしい。


葵 「あれ、里田さんは?」


亮 「もうくるはず何だけどなー」


亮 「心優ちゃん、体の痛みどうかな?」


心優は葵を見つめる。


葵が微笑んであげると、心優が口を開く。


心優 「…少し、痛く、なくなった」


亮 「よかった。

葵から聞いたと思うけど、

今日からリハビリ始めていくからね。」


そう言うとすごく悲しそうな、不安そうな表情を浮かべる。


葵 「大丈夫だよ、どうしても無理だったら、また、考えるけど、すごく優しいからきっと心優もすぐに慣れると思うよ。」


コンコンガラガラ


里 「失礼します」


ビクッとした心優は体を震わせる。


亮 「あ、来た来た。里田さん、よろしくね」


里 「はい!

初めまして、里田聖です。

今日から心優ちゃんのリハビリ担当になったから、一緒に頑張ろうね。」


心優の目線に合うように、

かがみ、自己紹介をする。


心優は泣きそうな顔をしながら、葵を見る。


葵 「大丈夫。」


とだけ言った葵は心優の頭をぽんぽんとする。


里 「初対面だから怖いよね。ごめんね。」


葵 「こんな感じなんですけど、大丈夫ですか?」


里 「全然問題ないです。時間はかかると思いますが、ゆっくりと慣れて貰えればいいんですけどね。心優ちゃんのペースでやっていこうと思います。」


葵 「ありがとう。」


亮 「じゃあ、始めていくかな?」


里 「そうですね。

よいしょっと。

心優ちゃん、握手。」


そう言って心優の目の前に手を差し出した。


心優は葵を見る。