医局に入ると亮がカルテを読んでいた。


葵が近づくと亮が振り向いた。


亮 「あ、お疲れ。

中島が葵の外来代わりに入ってくれたみたいだよ」


葵 「ありがと、あとでお礼しとく。」


亮 「心優ちゃん何かあったの?」


葵 「大分精神状態安定してきたと思ってたけど逆かもしれない」



亮 「え?」


葵 「今日朝家出ようと思ったら心優家帰りたいって言い出したの。

まだ帰れないよって言ったんだけど

帰りたいの一点張りで病院戻りたくないって。

何が嫌?って聞いたら

分からないって言ったんだ。

自分のことだけど、分からないって。

でもすごく怖いって言ってたの。

それからずっと泣き止まなくて…

最後は自分から病院行くって言ってくれたんだけど、ちょっと目離さない方がいいかもしれない。」



亮 「そっか。やっぱ心優ちゃんにとって

あの事件はすごく深い傷になってるんだろうな。」


葵 「うん、ちょっと油断しちゃったのかもしれない。

水族館でもね、俺が少し離れた時に心優男の人に絡まれちゃったんだよね……
その時にパニック起こしちゃって、喘息も出ちゃった。」



亮 「かわいいからね、心優ちゃん。

どうしても絡まれやすいのかな…

発作の方は大丈夫だったの?」


葵 「うん、大丈夫だったけど、薬使った。

今も喘鳴あるから今日も喘息出ちゃうかも。」



亮 「そっか。」


葵 「心優、結構1人で抱え込んでたのかもしれない。

心優、人を頼るってことができないのかも。

ここに来たばかりの時も


甘えることすらできなかったし、


どう甘えればいいか分からなかったみたいだから…」



亮 「また葵が教えてあげたらいいじゃん?

頼るってことはいいことなんだよってこと

葵なら教えられるでしょ。

大丈夫だよ、きっと。」


葵 「そうだな。



今日午後の外来中島入ってたよな?

それ、代わってやらないとな。」



亮 「今は心優ちゃんのそばにいてあげたら?」



葵 「いや、中島も仕事溜まってるだろうから、迷惑かけらんないよ、後輩に」


亮 「相変わらず優しいな、葵は」


葵 「そんなことない、普通だよ、普通」