ラグタイム2号店

「家出をすれば、少しは反省をしてくれるんじゃないかって思ってた。

自分たちがどんなに静絵に寂しい思いをさせたかと考え直してくれるんじゃないかって思ってた。

なのに、あなたたちは世間体のことばかりしか考えていなかった!

笑い者になるとか言って、静絵のことを少しも心配してくれなかった!」

「朝貴、理由はもうわかった。

もうこれくらいにして…」

怒鳴っている俺をさえぎるように、大輔さんが止めに入った。

俺は大輔さんに視線を向けると、
「大輔さん、あなたならきっとわかってくれると思っていました」
と、言った。

大輔さんの顔を見たら、昨日真渕さんが言っていたことを思い出した。

――客の女に手を出して、そのうえ彼女と一緒に逃げ出した最低な店員がいる店だって言う悪い噂を流されたら、とてもじゃないけど営業はできないよな

――弟のようにかわいがってきたお前が心配なのはもちろんのことだけど、何よりも大切なのは店の信頼だろうな

大輔さんが俺よりも店の信頼を優先したことを信じたくなかった。