ラグタイム2号店

大輔さんの声に視線を向けると、着物姿のおばあさんと白いシャツに黒いズボンの中年の女の人がホールに現れた。

あれが静絵のおばあさんとお母さんらしい。

「静絵!」

実の母に名前を呼ばれた静絵は、彼女たちから目をそらすようにうつむいた。

久しぶりの家族との対面に、静絵はどうすればいいのかわからないようだった。

「彼らは電車と船を乗り継いで月明島に行ったそうです。

そこで喫茶店を経営している夫婦のところで住み込みで働いていたそうです」

大輔さんがおばあさんとお母さんに事情を説明した。

彼女たちは驚いたと言うように目を見開いた後、
「静絵…!

あなた、どうしてこんなバカなことをしたのよ!?」

静絵のお母さんが今にも泣きそうな声で、静絵に向かって叫んだ。

「そうよ!

こんなどこの馬の骨ともわからない男と駆け落ちをして…!

こんなことが世間に知られたら、『黄瀬病院』は世間の笑い者よ…!」

静絵さんのおばあさんはおばあさんで、ハンカチを顔に当てると大声で泣き出した。