静絵は考えるように黙った後、
「…そうなのかな」
と、呟くように言った。

荷物をまとめ終えると、
「短い間でしたが、お世話になりました」

安藤さんと夏代さんに頭を下げた。

「俺たちも短い間だったけど楽しかったよ」

安藤さんは笑いながら言った。

「またいつでもきていいからね」

夏代さんも笑いながら言った。

温かい人に出会って、住むところも働くところも手配をしてくれて…短い逃亡生活だったけど、本当に楽しかった。

「本当にありがとうございました」

もう1度俺たちは深く頭を下げてお礼を言うと、喫茶店『海辺』を後にした。

「朝貴さん」

名前を呼ばれたのと同時に差し出された静絵の手を俺は繋いだ。