「コラ、力加減を考えろ」

たたかれた肩をさすりながら、俺は静絵に言った。

「朝貴さんだってこんな感じでたたいてきてるわよ」

静絵は何クソと言うように言い返した後、ベーッと舌を出した。

「俺、優しいと思うんだけどなー」

俺はハハッと笑うと、アイスクリームを口に含んだ。

「優しくない!」

静絵も笑いながら言うと、アイスクリームを口に入れた。

正直なことを言うと、双子の妹である夕貴が巻き込まれているとは夢にも思って見なかった。

もちろん、夕貴が俺の代わりとして『ラグタイム』で働いていることも知らなかった。

「あーっ、お腹空いたー」

アイスクリームを食べ終わった静絵がうーんと伸びをした。

「おいおい、たった今アイスを食ったじゃんか」

俺が言ったら、
「アイスは別腹なの!」

静絵がニッと歯を見せて笑った。