何より、ここへきてから静絵は心の底からよく笑うようになった気がする。

都会で学生生活を送っていた頃の静絵は、子供の頃から過ごしてきた家庭環境のせいで暗い顔ばかりを浮かべていた。

たまに笑顔を見せることもあったけど、俺に心配をかけまいと言うように無理をして笑っているような気がした。

「何を見てるのよー」

チョンと、静絵が俺の頭を小突いてきた。

「いや、よく笑ってよくしゃべるようになったなって思って」

正直に思ったことを口に出したら、
「そう?」

静絵が首を傾げた。

「同一人物かってくらいに。

まあ、どんな静絵でも俺は好きだけど」

俺が笑いながら言ったら、
「朝貴さんったらー」

バシンと、静絵が肩をたたいてきた。