ラグタイム２号店

その翌日から俺たちは喫茶店『海辺』で働くことになった。

「いらっしゃいませ、こんにちわー」

静絵が笑顔で客にあいさつをする。

うんうん、うまく行ってるな。

その様子を厨房で眺めながら、俺は首を縦に振ってうなずいた。

静絵から見たら初めての仕事だが、彼女はそんなにも経たないうちにすぐに仕事になれてしまった。

「しずちゃん、こんにちわー」

静絵にあいさつをしたのは、近所に住む喜多さんと言うおじいさんだった。

彼は『海辺』の常連客で、多い時は週に３回やってくるのだそうだ。

喜多さんは持っていた一眼レフのカメラを見せると、
「昨日おもしろい形の雲があったから撮ったんだ」
と、静絵と夏代さんに写真を見せてきた。

彼は写真が趣味だそうで、こうして自分が撮った写真を見せることがあるのだと安藤さんが言っていた。