ラグタイム2号店

「へえ、こんなにも若い観光客がきたの?」

おじさんは驚いたと言うように言った。

「えっ、えーっと…」

もちろん、観光と言うのん気なものではない。

だけど、駆け落ちですとはっきりと言う訳にもいかない。

そう思っていたら、
「お兄さん、もしかしてワケアリと言うヤツかい?」

おじさんが聞いてきた。

「えっ…」

しまった、気づかれた!

俺と静絵はまた顔を見あわせた。

「その様子だと、どうやら戻りたくない事情があるらしいな」

おじさんの言葉に、俺たちはうつむくことしかできなかった。

この場に沈黙が流れる。

その沈黙を破ったのは、
「おい、2階の角部屋が空いてただろ?」

おじさんの声だった。