ラグタイム2号店

しかし…歩いても歩いても、民宿らしい看板もなければ建物すらも見当たらない。

「本当にあるのか?」

もうすっかり夕暮れになってしまった。

「あった…はず」

「はずで済んだら警察はいらん」

ツッコミを入れる気力すらもなくなってきた。

よくよく考えてみたら、朝から荷物を持って新幹線とバスと船に乗って月明島にやってきた。

「どこかで休憩も兼ねて夕飯を食べない?

ちょうどお店があるし」

静絵が指差した方向に視線を向けると、ガラス張りの店があった。

表に出ている黒板とイーゼルからして見ると、飲食店かも知れない。

「ああ、そうだな。

ついでに道も聞いてこよう」

静絵の提案に俺は首を縦に振ってうなずくと、ガラス張りの店へと歩み寄った。