ラグタイム2号店

船に乗ってから1時間が経った。

「…本当にあるのか?」

右を見ても左を見ても海ばかりで、島の形や影すらも見えない。

乗っている船も大型ではなく、小さなもので、客は俺たち2人だけしかいない。

もしかしてとは思うけど、騙されたって言う訳じゃなよな?

離島にしても何にしても離れ過ぎやしないか?

そう思って静絵に声をかけたら、
「あるに決まってるじゃない。

受付のお姉さんだってあるって言ってたじゃない」

静絵は言い返した。

「まあ、そうだよな…」

でなきゃチケットだって発行してくれないと言う訳である。

とりあえずどこでもいいから早く到着してください…と心の中で願いそうになった時、
「あっ、あれ!」

静絵が指差した方向に、俺は視線を向けた。