「よし、忘れ物はないな」

ボストンバックには3日分の着替えと数日前に銀行で卸してきた全財産が入っていた。

『探さないでください』

そう書いた置き手紙と一緒に、スマートフォンをテーブルのうえに置いた。

いつになるかはわからないけれど、俺が逃げ出したことに大輔さんは気づくかも知れない。

警察に捜索届を出されてしまったら、時間をかけて立てた計画が全て水の泡だ。

そのためにも手紙を置いて出て行くことにした。

腕時計に視線を向けると、静絵との待ち合わせの時間まで後少しだった。

「さて、行くか」

俺はスニーカーを履くと、家を後にした。

照りつける太陽と爽やかな風に、もうすぐ夏がくるんだと俺は思った。