ラグタイム2号店

「家族には旅行に行くとでも言って出て行けばいい。

最低でも3日分の着替えを持って行くこと。

何か必要なものがあったら逃亡先で買えばいい。

ああ、スマホは家に置いた方がいい」

俺の言葉に静絵は半分にちぎったルーズリーフに書き込んでいた。

「それで何だけど…」

静絵はシャープペンを置くと、俺を見つめた。

「どこか遠くへ逃げることを考えているけど、どこへ逃げた方がいいのかな?」

そう聞いてきた静絵に、俺は考えた。

頭の中に、これと言って浮かんできた場所はなかった。

「当日に考えることにするか」

そう言った俺に、
「そうだね」

静絵は首を縦に振ってうなずいた。