ラグタイム2号店

「静絵…」

俺の声は届いていないと言うように、静絵は首を横に振るのをやめると、声を出して泣き出した。

そんな静絵の姿はとてもかわいそうで、同時に彼女の家族は静絵をここまで追いつめてしまったんだと思った。

静絵が幼い頃から跡継ぎである兄が第一で、彼女の話に耳を傾けたこともなければ、気持ちも考えたことがなかった。

そのせいで静絵は寂しい思いをして、同時に追いつめられて行った。

苦しかっただろうに…。

寂しかっただろうに…。

静絵をここまで傷つけた家族は、彼女のことを何も思っていないのだろうか?

そう思ったのと同時に、俺の頭の中にある考えが浮かんだ。

「――静絵」

声をあげて泣いている静絵の名前を呼ぶと、俺は彼女を抱きしめた。